あれは忘れもしない十数年前のいつだったかな、季節は不明。
仕事の関係上、何台か携帯を持っていた私は携帯電話の解約をするため、ボーダーフォン(現AU?)のお店に行った。
ラッキーなことに、私と同じくらいの年の可愛い店員さんだった。時間帯がよかったのか他に店員さんの姿はなく、なんとかお近づきになれないかと私は思っていた。
私は携帯電話の解約をしたい旨を伝えた。可愛い店員さんは解約の手続きを始めパソコンを操作しながらこう言った。
店員「端末をお借りしてもよろしいでしょうか?」
そう店員さんい言われ、私はズボンのポケットから携帯を取り出し、店員さんと対面している真っ白い綺麗なテーブルの上に携帯を置いた。
そこで悲劇は起きた。
解約する携帯電話の数センチ横に、1本の『ちぢれた毛』があったのだ。
私が携帯を出す時、ポケットに紛れていた毛なのだろうか。それとも可愛い店員さんの物だろうか。頭の中を疑問が駆け巡る。あれは明らかに『陰毛』だ。
「おねーさん、陰毛落ちてるよ(・v・*」
なんて言えるわけがない。警察に通報される可能性がある。私が携帯を置いたすぐ横に陰毛があったわけだ、出所は私のポケットの中だろう。99%の確率で私が発生源だ。
しかし、ポケットから携帯と一緒に『陰毛』が取り出されてテーブルの上に川の字に並ぶ確率とはいったいどのくらいなのだろうか。天文学的確率だ。
可愛い店員さんはパソコンの画面を見たままで、まだ巨悪の根源を見ていない。
しかし、私が手で毛をはらことはできなかった。可愛い店員さんに『陰毛』がそこにあることを気が付かれてしまう可能性があるからだ。
ここは、なんとか自分の息で吹き飛ばすしかない。
私はこの絶望的状況を『ふぅ~ふぅ~作戦』で乗り切ろうと考えた。
しかし現実は残酷だ。パソコンの操作を終えて可愛い店員さんはこちらを向いた。
幸いなことに可愛い店員さんは、まだ『毛』の存在に気が付いていない。店員は私の目を見ながらこう言った。
店員「解約とのことですが、差し支えなければ理由をお教えいただけないでしょうか」
なんとか気づかれる前に『ふぅ~ふぅ~作戦』を成功させなければならない。私は全ブレスを出力に切り替え、息を最大限に吐きながら、
私「電波のつながり(ふぅ~)にくさとかは(ふぅ~)なかったですね(ふぅ~)」
私が『陰毛』を目線で追ってしまえばおしまいだ、気づかれてしまう。店員さんから視線を1ミリも離さず、息を全開で吐きながら質問に答えた。
質問に答え終わった瞬間、勝利の女神は私に微笑みかけた。
店員さんが私の返答結果をパソコンに入力するため、横を向いたのだ。
このチャンスを逃すわけにはいかない。私は大きく『ため息』をつくフリをして、
「ふぅ~~~~~~~~~~~~う」
やっと毛を吹き飛ばすことに成功した。『ふぅ~ふぅ~作戦』の大勝利だ。
しかし、運命とは皮肉なものだ。吹き飛んだ毛が、店員さんの膝の上に乗ってしまった。
無事解約手続きは終わり、私はお近づきになるべく軽く世間話をしようと思った。だが、いくら可愛い店員さんとはいえ、彼女のヒザの上には得体のしれない『陰毛』があるのだ。
私は「なんか、この店員さんキモい」と思ってしまい、すぐに店をあとにした。
色んな意味で The End
以上、ぬむめでした。