はちゅねミクギターの制作過程を解説します。その5です。
初音ミクではありません。はちゅねミクです。
ボディの『はちゅねミク』柄部分の制作に入ります。
木象嵌(もくぞうがん)という言葉なんですが、私もコレを作るまでまったく知らない言葉でした。日本でかなり昔からある細工方法で、ようするに木で模様や絵を作るということです。
海外な言い方だと「インレイ」という技法ですね。木ではなく貝殻などで作っていくのが多いです。ボディにインレイワークされているのだとゼマティス(ゼマイティス)とか有名ですね。
ギターのポジションマークやヘッドのロゴなどもインレイです。それと同様に木材を使ってボディに模様をつけるために木象嵌という手法を行います。私はその道のプロではありませんので「こんなもんじゃね?」的に作っていますので、よろぴくです。
このギターを作るにあたって、最初はデジタル画像をプリンターで印刷して貼ろうかなと思っていました。ですが、「おっさんが持つにはプリントだとちょっとキツイかな?」ということで木象嵌で制作することにしました。あとで気が付きましたが、デザイン自体がおっさんにはキツかったです/(^o^)\
木象嵌でボディを作る
薄い木を使い顔部分を作っていきます。Illustrator で顔の部分を原寸大でパーツ化し型紙を作り、それに合わせて厚さ 0.2~0.5mm の木をカットしてきます。一般的に突き板(つきいた)と呼ばれる薄い板です。
いきなりボディに貼っていくとズレてしまい修正が難しくなります。端から端までを全体のパーツを制作してからボディにタイトボンドで接着していきます。
ほっぺの渦巻きとか、口の部分が発狂レベルの難しさです。実際、発狂しました。
木が薄いので(ペラペラ)、割れてしまうのは日常茶飯事です。木の裏に和紙が張ってある丈夫なものも販売されているようなのですが、私は木材のみの素材を使っておりハードモードです。
型紙にジャストで隣のパーツと完璧に合うまで調節しながら切っていきます。
突き板はデザインカッターなどでカットしていくのですが、大きめのパーツはハサミを使ったりもします。
ブログではでサラッといってしまいますが、紙と違って木は木目があるので切りにくく割れてしまうことも。失敗の連続で同じパーツを何度も作り直してます。
細かい微調整は精密ヤスリで整えていきます。ほんの少しの隙間でも(0.1mmとか)目立ってしまうので、結構過酷な作業です。
画像はありませんが、接着の前にボディの表面を水平にヤスリで調節しておきます。歪んでると残念なギターになります(デザインが残念というのは置いといて)。
型紙からカーボン紙(上からなぞると下に写る紙)でボディに線を書き、カットしたパーツを接着していきます。カーボン紙に書かれた線が太すぎるので、あくまで目安にしかなりません。線に合わせると大体ズレます。自分の作ったパーツを信じ魂を込めてタイトボンドで接着してきます。
薄い突き板は、反り返りによりが意志をもったようにズレていきますのでしっかりクランプで固定します。それでもズレます/(^o^)\
超細かいパーツはタイトボンドでの接着が難しいため(ゼリータイプの物)で貼っていきます。即接着だとパーツの合わせ具合を調整できないので、ゼリータイプがいいです。
髪の毛の部分まで貼ったところです。ただ無造作に木材を使うと木目が合わずデザインが崩れます。木目を合わせるためには贅沢に突き板を使わなければなりません。
今回使用した突き板の種類
茶色いの:謎
グレー:チーク
白っぽいの:ナラ
茶色:サペリ
黒:黒檀(こくたん)
その他:謎
7~8種類の突き板を使っています。
服の部分。
服の部分はネクタイや襟など発狂レベルで大変でした。黒い部分は黒檀(こくたん)という木を使っているのですが、それがまた固くて切りにくいんです。
接着後にズレてしまう悲劇も頻繁におきます。謎の怪現象です。これが木材の特性なのかもしれませんが、どんなに注意してもズレてしまうことがあります。
タイトボンドで接着し乾いた場合はカンタンに剥がすことはできません。失敗した場合は破壊してもう一度作り直しです。
顔の部分のアップです。口の部分やほっぺの渦巻きは、サモハン・キンポーがカンフー辞めるレベルの細かさ、地球にコロニー落ちればいいのに(ガンダム)と思うほど絶望感を味合うファンタジスタ体験が可能です。
あまりにも小さくてわかりにくいかもしれませんが、小さな穴やカケなどを修正していきます。
その箇所に木目を合わせたものをカットし、接着剤をつけてピンセットではめ込んでいきます。細長い隙間も同様で、0.1~2ミリにカットして埋め込んでいきます。
目から煙でるレベルです。
すべて貼り終わって、水平になるようヤスリで整えた状態。ヤスリで平らにしている最中にパーツが破損したりします。バックトゥザフューチャーを3→1→2の順で見たくなるレベルの悲壮感を味わう事が可能です。
終わりに
木象嵌(もくぞうがん)は繊細な作業で大変なのですが木工好きにはとても楽しい作業です。さまざまな可能性を秘めた木工技術で、エレキギター以外にも色々と応用が利くと思います。みなさんも挑戦してみてはいかがでしょうか。
以上、ぬむめでした。